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右手の人差し指が

動きません。
なんか腱鞘炎らしいです。
ふびん、いや、不便です。
中指で代用しながらキー叩いてます。
うー、さっきからタイプミスばっか。
あ、でも痛みとかはなくなったので心配しなくていいよ。
というのはさておき。


新聞の川柳壇には熱心な投句者の方々がいてくださって、
毎回とてもたのしく作品を読ませていただいている。

たとえば前々回と前回の入選句から


 
 君の手を握ってしまいそうな春/鷲見正子

 かさぶたのたがとれなくて血が滲む/長谷川維乃里

 行く人来る人そして私は春が嫌/丹下 純

 花の降る絵画の中へ駐車する/霜上春子

 切羽詰まると水掻きが生えてくる/塩谷美穂子

 太陽に黒点象の耳に蠅/小林英昭


どれも常連さんたちの作品である。
共通するのは思わずコメントせずにはいられなくなる句たちだというところ。
こんなことつぶやかれたら、隣にそっと座っていたくなるでしょ。

技術はないよりもあったほうがいい。
けれど、技術以前に、作品の背景にある作者の体温や心音や呼吸の断片が感じられれば、読み手はその句を愛さずにはいられなくなるんじゃないかと思う。
だから、何か言いたくなるのだ。

ちょっとカッコよすぎるけれど、
評とは愛なんだと思う。
それがたとえ酷評であっても。
by nakahara-r | 2013-05-29 21:12 | 東海柳壇 拾穂抄

顎のはずれた鯨

先日スマホの機種変更をした。
ややこしい設定すませ、電話帳の整理をしていて手が止まった。
石部明
ふいうちだ。
胸が痛くなってそのまま閉じた。

「川柳展望」のバックナンバーで出会った石部明の川柳は、初心者だった私には衝撃的だった。
不吉でいかがわしくて猥雑で、まるで江戸川乱歩の世界のようであった。

 
 夜桜を見に行ったまま帰らない
 賑やかに片付けられている死体
 たましいの揺れの激しき洗面器



思えば明さんからいただいたものはたくさんある。
ネット句会やメーリングリストの句会、あちこちの大会の懇親会で川柳の話もいっぱいしていただいた。

 街中の携帯電話が鳴る 桜
 タンカーをひっそり通し立春す
 またがると白い木槿になっちまう
 こいびとよあなたは濡れて着く荷物
 

これらの句は石部明がこの世に送り出してくれたもの。
ほんとうにちからのある(権威みたいなにせものの力ではなくて)表現者に背中を押された作品は、うんと遠くまで歩いてゆける。
評価を受けるとしても手柄は作者だけにあるのではない。
ああ、育てていただいたんだなあと、しみじみ思う。

明さんとは「バックストロークin名古屋」でお会いしたのが最後になった。

 長袖を手首出てくるまでが夢

特選に選んでいただいたこの句。
明さんの口からこの句が発せられた瞬間を、わたしはずっと、できる限りずっと、覚えていたいと思う。


ここまで書いていてふっと思い出したことがある。
もうずいぶん前のことだけど、川柳緑会の大会で歌人の加藤治郎さんをパネラーに呼んだことがあった。懇親会の席で横にいた明さんから箸袋を渡されて、それを開くと「タンカーも加藤治郎もただの船」と書かれていた。こちらもノリで、そのまま加藤さんに渡してやったら、いたずらがみつかった子のように、えへへと笑ってごまかしたのだった。ああいうときの明さんはちょっと手に負えないくらいチャーミングだったなあ。

 老人がフランス映画に消えてゆく/石部明
by nakahara-r | 2013-05-22 00:05 | 川柳

旅する句集

身近なひとには話したことがあるけど、嘘のようなほんとうの話である。

もう10年以上も前のこと。
ある日、知らない男性から『散華詩集』の著者のなかはられいこさんですか? という電話がかかってきた。
聞けば、軽井沢の別荘に掃除にいったところ、ふらりと入った国道沿いの喫茶店に句集が置かれていた。
ひまつぶしに読んでみたところ、こころに響く句がいくつかあったので、手帳に書き留めていたら、見かねた喫茶店の店主がコピー機があるからコピーすれば? と勧めてくれたと言う。
だが、著作権上、コピーするなら著者の了承を得なければと思い、奥付をみて思い切って電話したとのこと。

第一句集のことなどすっかり忘れ去っていた頃だった。
なんて律儀な方だろうと思い、それ以上に川柳を知らない読者であることがうれしかったので、コピーは言うに及ばず、住所をお知らせくだされば句集をお送りすると申し出た。

で、ここからである。

住所をメモし、名前を訊く。
「ナガシマ、シマは山鳥のほうの。名前は○○」
え?

メモした住所をもう一度見直す。
「国分寺」
え?

「うちは古物店をしていて」
え?

国分寺、古物店、長嶋○○さん……。
し、知ってる。

「あの、もしまちがっていたらごめんなさい。もしかして長嶋有さんのお父様ですか? 芥川賞作家の」
と、おそるおそる訊いてみると、「な、なんで……」と電話の向こうはしばし絶句。

そのころ長嶋有さんとは恒信風という俳句のグループを通じて何度か句会をしたりしていて、お父様の名前も、国分寺で古物店をされていることも伺っていたのだった。
と、説明するも、あまりの展開にこころがついてこず、長嶋さんもよほど驚かれたらしく、
「別荘の掃除には昨日行くはずで、今日は馴染みの喫茶店が休みで、昨日行ってればそちらの店に入っていたはずで、ここの店主がコピーなんて言い出さなければ書き写すだけで、電話はしなかったはずで、」と、ひとりごとのようにつぶやくばかり。
お互いになにものかに圧倒されたまましどろもどろな会話を交わし、しどろもどろのまま電話を終えたのを覚えている。

電話を終えてからやっとこころが追いついた。
句集はどんな道のりを経てその喫茶店までたどり着いたのだろうか。


本はひとりで旅をする。

本が本の形をしているかぎり、著者の想像を超えたところで、
著者の想像を超えた読者との出会いを実現するのだ。
何年先にか。
だれかと。

句集を出しててよかったと思った。
by nakahara-r | 2013-05-21 01:18 | ただの日記

ねじまき吟行

ねじまき5月句会は吟行でした。
場所は桜で有名な山崎川周辺。

ねじまきには事務能力に長けた、瀧村小奈生さんがいて、
会場の確保から周辺の下調べまでお世話になりました。

こーんな地図まで! いたれりつくせりです。ありがたや。
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地下鉄の出口をまちがって、集合場所のコメダに自力でたどり着けず、
電話で「そこから動かないでくださいねっ!!」と言われてへこむのはいったい何度目でしょう。
というわけで、山崎川です。

コメダでモーニングを食べ損ねたのでおなかは極限状態。
ベンチに座ってさっそくおにぎりをぱくつく。
川の水は少なめ、ミズゴケがすごい。
太った鯉の集団が泳ぐ。
晴天とはいかなくてちょっとざんねんだけど、日差しがやわらかで、ときおり風が吹いて気持ちがいい。

太った鯉と太った鯉を見る鴉
半身に水苔つけて座ってる
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葉桜の下でまぶたをおろそかに


これは東山荘(とうざんそう)の入口。
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庭園の外周をまわる。
曇っているせいか木立が密集してるせいか、うすぐらい山道といった経路をめぐる。
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さいしょはゆで卵の殻かと思った(コメダのモーニング後遺症である)
けど、道に点々と同じような殻が落ちているのだった。
思わず頭上を見上げる。

いま落ちて割れた卵から言葉

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東山荘から山崎川に戻り、ベンチでひとやすみしているともう集合時間30分前、あわてて戻る。
途中で雨が降り始め、ちょっとだけ湿って、2時ぴったりに到着。
また最後のひとりだったらしく、こなおちゃんをやきもきさせる。
ちょこっと反省。こら。

吟行でいちばんたいせつなことは……。
道に迷わないこと!

あ、あと、
傘?

予報は雨だったのに(でも夕方からだった)ながたまみちゃんもこなおちゃんも持ってきてなかった。
どーゆーことだ(笑)。
by nakahara-r | 2013-05-20 08:45 | 川柳

降ってくるもの

ひとり静さんから第二句集『海の鳥・空の魚Ⅱ』を拝受。
あとがきによれば第一句集から5年目の出版であるらしい。
短詩型の作家としては理想的なタイミングだと思う。


さくら散るわたしの水を動かして

ふあふあと咲いているのはおばあさん

やれるだけやってみますと薬包紙

この次はあなたをちゃんと組み立てる



強烈な自己主張がないので読みやすく、疲れない。
ここにひいた作品はその中でも主張しているほう。
ひらがな率が高いこともあって、全体的にやわらかく淡い印象の作品が多い。


降ってくるものにはふっとさしだす手

世界と関わるときの作者の姿勢として象徴的な句である。
やわらかくて淡いという印象はこの姿勢からくるのかもしれない。
さしだした手をさて、どうするのか、今後の作品を楽しみにしたい。
by nakahara-r | 2013-05-18 22:20 | 川柳

とりあえず春を四つに割ってみる

タイトルはねじまき4月句会の提出句

寒かったり暑かったり、まったく得体の知れないことしの春だ。
連休は家庭の事情ってやつでなんだかバタバタと過ぎ、
緑の屋外でぼーっと過ごす時間がなかったのがざんねんだった。

4月句会のわたしのお気に入りを数句ご紹介。

題詠「四」より
 地図でいう四国あたりが私です/米山明日歌
 クッションをどけて四月を座らせる/八上桐子


明日歌さんの句は「四国あたり」をどう解釈するかですね。
日本列島の形からして
タツノオトシゴのお腹あたりとわたしは踏んだんですが。
ちょいよわっちい感じがいいなと。
桐子さんの句は「四月」という月の持つ特別感がとてもよく出てて好き。
これが二月とか六月じゃちょっとクッションどけてまでは……って思うよ、
うん。

 神様などいまさらあてにしない蛸/青砥和子
 はじまったばかりの春のオムライス/妹尾 凛
 月光はゆっくり曲り納屋に入る/丸山 進


青砥さんの「蛸」はサイコーですね。有無を言わせぬ説得力。
ほんわかしあわせな気分にさせてくれる凛ちゃんの句。
オムライスが春とこんなに似合うとは。
おやおや、なんだ、この徳永政二ふうな句は。
しかも「納屋」の効果的なこと。丸山さん、キャラが違ってますってば(笑)



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ちょっとだけ時間ができたので、近くの山までドライブした。
山藤がみごと。

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つまさきはもうじき夜でいまは藤     れいこ
by nakahara-r | 2013-05-05 22:59 | 川柳