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あねもね地域連絡網(抜粋)

第一回「歌葉」新人賞 佳作



「あしたね」ってだれかが言って彼の国の丘のきりんは脱臼したの

 屋上のフェンスの錆をつけたままつないだ手から繭が生まれた

 桜吹雪にときおり混じる獣語を解読せよと指令がくだる

 えんぴつの芯には龍の成分が混じってることだれにも言うな

 密林に雨が降ります押入れに発酵まぢかの虹があります

 どうしようもないことだけでできているアネモネだから夜を壊そう



 うっすらと時間が積もるソファには青くしたたる鮫が寝ている

 人喰い鮫が出てくる前の海に似てしんとしずもる春のキッチン

 陽に灼けた洗濯ばさみがわたしですカナリア色のタオルをつまむ

 サンダルのかたいっぽうはサバンナに昇る朝陽を見に行きました

 一滴の水でゆるゆる立ち直るストローの袋、遠い銃声

 傘の骨、曲がってますね。壁の色、ペールブルーになるはずでした。



 死にたがり病の羊を追っているマーブルチョコをばらまきながら

 お父さん、みな葉桜になりました。背中の痣もあなたの声も。

 ゴム跳びのゴムがびゅんびゅん鳴るような風にまぎれる祖父母のなまえ

 家族って包帯みたいたゆたゆと満ちてくるのは水藻の匂い



 ぼくたちの言葉は長い旅に出て雨や光になるんだ、たぶん

 一条の光が射してたったいまボトルシップは出港しました

 宣誓の樹はまっすぐに陽を受けてここにはいないひとに微笑む

 星形の注射のあとをてがかりに一万年後の渚で逢おう
by nakahara-r | 2002-05-21 11:33 | 短歌