向日葵に胸があってはなりませぬ

タイトルは、ねじまき6月句会の題詠「胸」提出句。

6月も終わりますね。
もう一年の半分が過ぎたかと思うと、意味もなく焦ります。

さっきテーブルの足につま先をおもいっきりぶつけて、痛みがあたまのてっぺんまで届いたのでした。
泣きたくなったので、思い切って泣きました。
こういうとき、一人暮らしだと気が楽です。
だれにも気を使わないで泣ける。
だけど、まりんさんが心配そうにみつめるので、しかたなく泣きやみました。
ああ、すっきりした。
精神的な要因では泣かないのに、肉体的な要因で泣く、というのはどうなのか、自分。
とつっこみをいれたところ。


「びわこ」6月号から

母さんが両手でしぼる菜種梅雨  谷口 文
奥の間で母がくしゃりと潰す箱  北村幸子

チェックした順に引いたら、たまたま母の句が揃ってしまいました。
娘の視線がとらえる母、というのは特別で複雑です。
菜種油ではなくて、菜種梅雨をしぼるような得体の知れなさ。
<両手で>とありますが、だいたい雑巾でもなんでも絞るときって両手ですよね。
なのにわざわざ<両手で>と書かれることによって、読み手にとって、なにかをしぼる自分の手の動きを追体験しやすくなるという仕掛けがあるのではないでしょうか。
次の<奥の間>の句。
奥の間という隠蔽された場所で、なにが入っているのかわからない箱を潰すような怖さがあります。
<くしゃり>という擬音が怖さを助長してて、もう、ほとんどホラーです。
その怖さというのが自分の投影であることを、娘である彼女らはよく知っているのです。

アナウンスされた番号から散るよ  久保田 紺
病院とか、銀行とかでしょうか。
「24番の番号札をお持ちの方は3番窓口へどうぞ」とかいうアレですかね。
だから、この<散る>は「番号札を持ったひと」であるはずで、人があちこちに<散る>のになんの問題もありません。
ところが<番号から>という省略のために2とか、4とか、5とか、数字が花びらのように散る光景が連想されます。なんだかとってもデジタルですね(意味不明)

私の声がちゃんと出てるか桜島  街中 悠
わたしの中でわたしが溺れてる  藤本 花枝

またまた、偶然にも<私>と<わたし>が並んでしまいました。
以前、俳句の友人に「川柳はわたしわたし言いすぎる」みたいなこと言われて、深く同意したことがありました。
でもね、弁解すると、ことほどさように、川柳書きは自分自身を信用していないんですよ。
自分という存在が自明ではないところからしか発語できないのが、川柳書きのサガではないかと思うのです。

軒下に仕立て屋の札すみれ咲く  増田雲水
いいですねー。
「軒下」といい「仕立て屋」といい(しかも札!「着物仕立て〼 とかいうヤツですかね)ちょっとレトロなにおいがします。景だけで成り立っているところなんか俳句っぽい仕立てなんですが、こうゆうのも好きです。
風が吹いてて、札が揺れてるとなぜか確信しました。

ふりかなは背中に付けておきますね  月波 与生
ああ、それはご親切にどうも。と言いたくなりました。
だけど、なんの背中なのか、謎。
そもそも<ふりかな>をふられるべき漢字(あるいは外国語の固有名詞)はどこにあるのか?
たとえば、ものすごく理不尽なことを言われたとき、その相手の背中に理不尽さのみなもとを感じたりすることもあるよなーと、ふと思ったのでした。

裏側が磁石になっている四月  峯裕見子
いや、おもしろいです。
で、冷蔵庫とかにぴたっとはっつけておくんですよね。
ピカピカの新入生や新社会人たちであふれる四月ですから、落っこちたり風で飛ばないようにぴたっと。
ちなみに12月だと裏起毛とかになってるんですかね。

この朝はカーテンとしてどうなんだ  徳永政二
いや、どうなんだって言われても……。
と、カーテンくんが困惑してる図が浮かんできて笑えます。
たぶん作者の思惑とは違う朝だったりしたんでしょうけど、<この朝>って言われるほど他人からみれば特殊でもなくて、それはカーテンとはなんの関係もあろうはずはなく。
まあ、そんなことは百も承知で八つ当たりされてるんではないでしょうか。
穏健な作風の徳永さんには珍しい句だったので、なんかうれしくてニヤニヤしてしまいました。

三角がかたんことんと来てくれる  小梶 忠雄
三角形が動くとすれば、まさに<かたんことん>と音たてるでしょうね。
めっちゃかわいいんですけど、この三角。
しかも<来てくれる>んですよ。
「さよなら三角、またきて四角」という歌かな、囃子言葉かな、そんなのありましたよね。
トライアングル、冬の大三角形、三角関数、三角関係、壮大なものから卑近なものまで、三角ってすごいなあと思います。この句をみなければ三角について考えることなどなかったはずで、まさにそういうところが川柳を読む楽しさなんじゃないかと思います。
by nakahara-r | 2015-06-28 23:40 | 川柳


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