笹田かなえ句集『お味はいかが?』

笹田かなえ句集『お味はいかが?』が届きました。
いかが? と訊かれて答えないわけにはいかないので、
さっそくお味見させていただいたのでした。
チェックした句はもっといっぱいあるのですが、とりあえず10句挙げます。

不器用でのん気できれい薬指

のみこんでしまえば青くなる夜景

小石でも踏んだみたいな空の青

ものすごい緑のままで枯れていく

飛べるかもしれない秋の扇風機

適当にって言われた雨の匂いがした

どこからか螺子を巻く音屋敷町

正体をあらわすときの水の音

ここからは摺師の仕事青葉闇

ほとんどが降りてしまった汽車に乗る


第一句集のタイトルは『水になる』でした。
あれから20年。
上の10句はちがいますが、やっぱりかなえさんは総体的に水っぽい(笑)
でもいくら水っぽくても情念系にいかないで踏みとどまることができるのは、
底流に清潔感があるからではないかと思うのです。
あと、突き詰めすぎない、あっけらかんとしたテキトーなとことか。
ともだち目線でいえば、天然なんじゃないかと思います。
いままで面と向かって言ったことはありませんが。

笹田かなえの人的魅力は、たとえばこんな句にあって

ともだちのともだちが東電にいる

正義だとか、悪だとか、この世界は二元論ではけして語れない事象で溢れています。
だからわたしは一見正しそうな、通り一遍の(ようにみえる)批判は信じませんし、評価しません。
掲句のように右往左往している作品こそ、評価に値するのではないかと思うのです。

青森からの帰り、八戸で新幹線を降りると彼女は発車するまでホームから動かず、
ずっとにこにこしながら手を振り続けるのです。
いつも。
もうだれも残っていないホームの端っこで。
大きな荷物かかえたままで。
もういいよ、はやく行って。
とジェスチャーで(なにせ窓越しなので)伝えても、ずっといる。

たぶん、わたしが視界から消えるまで。
なんか、じーんときちゃうんですよ、それを思い出すたびに。


by nakahara-r | 2015-03-17 22:06 | 川柳


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