撫でられてタルタルソースになりました

タイトルは弘前の大会「撫でる」の入選句。

新春大会から2週間、ぼーっとした日々が続いておりました。
いや、年末に買い替えたばかりの新しいパソコンが急に起動しなくなったり、
父が転んだり、母が倒れたり、職場の新システムの使えなさのせいで残業が増えたり、
まあ、いろいろあったりはしましたが、いずれも大事には至らず……一月も終わります。
(この……の部分にある省略が川柳的飛躍というやつですね)


そういうわけで、ものすごく遅くなってしまいましたが、
「おかじょうき」1月号から

ゆうふれんしばらくべんとうはびすこ  月並与生
さいきん、ローソンで売ってるビスコのブルーベリー味というものにハマってます。
いや、それはおいといて。
よろめいている奥様にお弁当を作ってもらえず、ビスコ食べてます的な、
もうほとんど絶望的につまんない解釈をしてしまったわけですが。
「有夫恋」を知らないひとには謎という魅力が付加されるわけで。
知っている読者にはマイナスに作用するかもしれず、
知らない読者にはプラスに作用するかもしれない。
こんな両刃の剣をあえて(と思います)使われたところに注目しました。
いずれにしても「しばらくべんとうはびすこ」はこころ惹かれるフレーズです。

二等辺三角形のプリン体  土田雅子
プリン体って旨み成分のことらしいですが、顕微鏡でみると二等辺三角形なんでしょうか。
いや、それはない、ない。(と思う)
二等辺三角形というかたちを提示されたとたんに、プリン体ではなく、プリンを(あれは台形だけど)想像してしまう、というところにこの句の面白さがあるように思います。
それはランゲルハンス島と聞くと、南の島を想像してしまうのと同じですね。

カルピスの中のスピカのきらきらよ 松木秀
一読、アナグラムだよねと思い、アナグラムだとしたら余った「ル」はどこに行ったのかと思う。
カルピスといえばあの白地に青い小さな水玉です。
で、あの水玉のひとつにもしかしたらスピカが混じっているのかもしれない。
ルも散らばっているのかもしれない。ルルルルルってかんじできらきらと。
だってスピカって乙女だし。

あと二つアウトをとって店仕舞 三上玉夫
おもしろいです。
この「店仕舞」は、今日の、だと思います。だって早く閉めて帰りたい感がにじみ出てるから。
アウトが何を表すのかはおいといて、まだ1アウトなんですよね、実は。
「あと、ふたつ! あと、ふたつ!」とこころの中でシュプレヒコールしてるんでしょうね。
でも、そう唱和したとたんに敵チームにヒットが出るとか、ありがち。
そんなことまで想像させてくれる句はすてき。

ヒビ割れの三角定規 喪が明ける 守田啓子
モノを見つめているうちにふっと、スナップ写真のように過去の一場面が浮かぶことがあります。
で、見つめる対象として何を提示すれば、過去の一場面がより鮮明に読者に伝わるか、が勝負となる。
透明なプラスチックを白っぽく濁らせるヒビと、一見、とてもつながりそうにない喪明けの感覚を、映像の鮮明さでつなぐことに成功しているのではないかと思うのです。

北斎が空を泳いでいる しかし  むさし
これは楽しい絵。
北斎というと怪物的というか妖怪的なイメージがあって、空を泳ぐのも不思議ではないように思えます。
で、問題は「しかし」。
この「しかし」さっぱりわかりません。
でも、しかし、と言われたら、その先を考えてしまうのが読者のサガ。
なんか、そのサガをうまく逆手にとられてるような気がしないでもありませんが。
やっぱ、してやられてるのかな(笑)

真夜中に貰ってしまう正方形 柳本々々
正方形なんかもらっちゃうとちょっと困るっていうか、持て余すんですけど、
しかも真夜中に。
真夜中に貰うのなら、かくかくしてなくて、しかも正しくない、多少ゆがんだりしてるもののほうがありがたいような気がします。たとえば楕円形とか。
だから、「しまう」なんですね。お困りのご様子、よおくわかります。


柳本々々さんのブログ「あとがき全集。」で、東海柳壇をとりあげていただいています。


「次元の脱衣場としての東海柳壇」
かっこえー。
作品以外にも東海柳壇という「場」のはたらきについて言及していただいいて、とてもうれしかったです。
ありがとうございました。

柳本さんから真夜中にきらきらのスピカをいただきました。
そんな一月末日。


DかQ どこでもドアは一度きり 柳本々々




by nakahara-r | 2015-01-31 23:20 | 川柳


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