おかじょうき10月号

手元にあるもの、順番に読ませていただいております。

ではまず「おかじょうき」10月号より
「川柳ステーション2014」のパネルディスカッションが掲載されています。
テーマは「破調の品格」。テープ起こし大変だろうなと、毎回思いますというのはまた別のお話。個人的には定型至上主義ではないけれど、定型の恩恵というものはありがたく享受させていただかねば損、というのは思います。音読して気持ちよくないものはだめかな。

過ぎた日のどこを切っても鰯雲 熊谷冬鼓
「鰯雲」いいですねえ。
過去の記憶の背景にあったのは、入道雲であり、うろこ雲であり、茜雲であり、雷雲であったはずなのだ。鰯雲ばっかりなんてことなありえない。
だけど、いやなこともいいことも、忘れたいことも忘れたくないことも「過ぎた日」というフォルダーに振り分けられたとき、みんな鰯雲みたいなものになるということなんでしょう。
吸い込まれそうな深い青に浮かぶ白い雲のかけら、すがすがしくてすき。

やまとことばでくちびるをふさぎきる Sin
このひらがな書きはエロいです。「ま」「ば」「る」「る」の小さい○のせいか、文字がくねりながらせまってくるような。ついでに壁ドンくるか?

擬態するせめて茶漬けの海苔らしく 月波与生
海苔! しかも茶漬けの。
実際は鮭とか、梅とか、しぐれとかに擬態したかったんだが。ってことですよね。
そもそも「擬態する」対象として「茶漬け」ってところがツッコミどころ。
その上「海苔」。マトリョーシカのようにツッコミどころが現れます。
でもよくよく考えてみれば、茶漬けの海苔ってけっこう重要ポストなのではないだろうか。と、思ってしまったらまたマトリョーシカ。

「ざけんじゃねーよ」と星を撒き散らす 奈良一艘
多くは語りますまい。一読おもしろければいのではないかと思ったしだい。
「星」一点に賭けて勝った、一句。

ここまでをくちゃっとまるめ舟を呼ぶ 守田啓子
今回の一押し。
「くちゃっと」がめっちゃいい。反古を丸めて捨てるときの紙の感触を、手のひらが思い出す。でも捨てないんですよね、それ。丸めるだけで。そこもいいけど、いちばんは「舟を呼ぶ」ですね。船では大きすぎて呼べないってこともありますが、「舟」という語が持っている<渡す/渡るもの>というイメージがいいなと思います。前向きとか、けなげとか、自立とか、なんかあんまり好きじゃない言葉でしか言えなくて困るんですが、膝についた砂をはらって立ち上がるみたいな、気持ちの立て直し方の鮮やかさとでも言えばいいのか、そんなふうに思いました。

早合点している子規の内宇宙 柳本々々
「SOUTAI」を宣戦と取る異星人
から始まる「早」の頭韻5句。
これはもしかして終刊に参加された『So』へのオマージュではないか、
などと深読みしてみるのも楽しいですね。
掲句の「早合点している子規」はうざったさ50%、かわいさ20%、せつなさ20%、あとの10%に子規という伝説の人物へのいわくいいがたい何かがあります。
たぶん読み手によって違う何か。その何かを引きずり出すのが「内宇宙」ということばなんではないでしょうか。根岸の小さな家の小さな庭に咲く鶏頭のことなどを思いました。


by nakahara-r | 2014-11-05 21:26 | 川柳


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