夕日、鍵盤、しじまの袋

初夏のような陽気。
こたつとストーブ、やっとしまいました。
お布団も夏用に換えました。
あ。
図書館行くの忘れてるー。へ、返却日が……。

というわけで、「おかじょうき」5月号から

朝露は保険適用外である 安藤なみ
保険適用外って。
古来から「はかなくて美しいもの」として多くの和歌に詠まれた朝露もかたなしですな。
まあでも、早朝、おろしたてのスニーカーとかサンダルを朝露に濡らされたという経験があって、(どんな田舎なんだというはなしは無しね)これはなんか納得できる句でした。

どうせまたなんていいだす海苔の缶 熊谷冬鼓
ああ、言いそう。
缶、しかも海苔の缶ってめっちゃシビアな立場なんですよ。
ふた、ちゃんとしめてねっ! って言いたいの、ほんとに。
いいかげんなひとが多すぎて、どうせまたちゃんとしめないんだよね、そうするとしけるんだよね、海苔が。
って、ほんとはそんなにはっきりした因果関係なんて必要ないんですけどね。
瞬間的に、言いそうって思えばいいんだと思います、はい。

綿菓子が飛んで来たので棒を振る 鈴木せつ子
な、なんと、アクロバテックな。と動きを想像して笑ってしまいました。
綿菓子つくる機械の中、みたことあるんだけど、くるくるわまる綿を割り箸でからめとるんですよね。
しかし、べたべたした甘いものが顔とか首とか腕にくっくのはちょっとかんべん。

訓練にしては鋭い矢印だ 月波与生
そこはもうすこしゆるくていいんじゃね?
みたいな感じがでてて、けっこう共感しました。
「矢印」がいいですね。指示する声が厳しかったりしたんでしょうかね。
訓練とありますが、こういうことって訓練にかぎらずありそうな。

病院のスリッパの音ふっと海 ひとり静
病院のスリッパって特徴的ですよね。足の裏にぺたぺた張り付くビニールのちょっとした不快感。
歩くたびにぺたぺた。そんな音から海は遠いような、近いような。「音」の句なのに、体感的なものを刺激される、なんかふしぎな魅力がありますね。

ワタクシの席に夕日を座らせる 守田啓子
カタカナで書かれた「ワタクシ」は「わたくし」より「私」より、普遍的というか、記号的なもののように思えます。
記号としての「ワタクシ」は夕日に置き換えることもできる、と言ってるんではないでしょうか。置換するものが「夕日」であるところに作者の人間性みたいなものが出てますね。

鍵盤をめくってみればやわらかい 柳本々々
初見の作者だと思うんですが違ったかな。
今月号でいちばん注目した書き手でした。
「鍵盤」をめくるという発想+「やわらかい」という認識。
んなバカな。と、言い切れない「なにか」、がここにはあって、その「なにか」をつきつめてゆくことが、書くということや、読むということなんではないかと、思ったりしました。

忘れていくものが袋になるしじま 横澤あや子
これもわけわかんないです、はい。
淋しいとか哀しいとか、簡単には言い表せない、ってゆうか言いたくない、どうしようもなさが「忘れていくもの」にはあります。だけど、忘れてゆくものを忘れることのほうが怖いことなんじゃないかと思うわけです。「袋になる」がどんな状況なのかはわからないけれど、さいごに置かれた「しじま」の諦観は深いです。
じんとしました。
by nakahara-r | 2014-05-25 22:40 | 川柳


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