定金冬二『無双』連

- 蓮 (昭和49年~50年)-
死者百句にんげん百句のど仏

死人から死者になる華やかなる荒野
喝采の終わらぬうちに死者になる
意識の底に一人の死者が沈んでくる
ぼくはきっとカマキリという死者になる
死者ふざけすこしふざけて硬直す
葬列や邪魔になるのは死者の耳
儀式のなかで本物は死者ひとり
親類がずらりと並ぶ死者は他人
冬濤がからからと鳴る死者も鳴る
死者は石に還ろうとして罪に落ち
おんなの胸で死者の泪はすぐ乾く
死者とバラ褪せてゆくのはバラの方
ぬくい日で死者から絵ハガキが届く
死者といてときにワルツもよろしきもの
死者来り乳房をドレミファと掴む
漬物がおいしいという憎い死者
死者のハンカチは白かろうはずがない
城聳え死者は耳から充実する
釣り竿をかついで死者に逢いに行く
遠いところで死者は蝙蝠傘を持つ
奇数で追っかけてくる死者の靴
死者は六法全書を抱いて行き詰まる
死者は最後に水を欲しがったりはせぬ
百人もならぶと死者もおもしろや
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by nakahara-r | 2009-06-17 00:59 | 定金冬二『無双』


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