くちびるに包まれるまで水でした

短歌:村上きわみ
文:なかはられいこ


裏返すときにおかしな音たてるおまえのからだ こわしてもいいか?  村上きわみ 




これは みず の音なのか
それとも すな の音なのか


裏返したり
折り畳んだり
入れ替えたりするたびに
聞こえるこの音


窓ガラスにあたる雨のような
砂漠をわたる風のような
とても遠くて
とても近い


おまえのからだに詰まっているものの正体を
見てみたい
猛烈に






わたしはむすぶ。

はてしなく遠くて、
かぎりなく近いものたちを。

回覧版と飛行機雲を
シャワーノズルと朝顔の蔓を
骨の折れたビニール傘と欅並木を
アスファルトにチョークで描かれた魚と噴水を

はしっこをほんのすこしひっぱるだけで、
ほどけたいときに、
ほどけたいだけ、
ほどけるように。

ゆるく、ゆるく。

ほら、
いま音が聞こえたでしょう?

どれかほどけたね。



くちびるに包まれるまで水でした     なかはられいこ
by nakahara-r | 2004-09-21 11:14 | きりんの脱臼(短編)


<< 題詠マラソン2004 えいえんは蝉のなきがら仰向けの >>