2002年 10月 07日
しわくちゃの空とぼくとを記憶する
文:なかはられいこ
雨なので ポケットの中のくしゃくしゃのレシートをわたしにくださいな
村上きわみ
拝啓。
きのう、ドトールの柳橋店ですれちがったものです。
あなたが座っていた席にくしゃくしゃのレシートが一枚落ちていました。
わたしは噛んでたガムを捨てようとして、
なにげなく皺を伸ばしてみたのでした。
ファミリーマートのレシートでしたね。
おにぎり2個と、洗濯バサミと、ウナコーワ。
「ふっ」と笑いました。
いや、ですからね、たとえばあれが
紀伊國屋書店とかタワーレコードとかESSOだとかのレシートならば、
わたしは「ふーん」と思ってそのままガムを丸めて捨てたでしょう。
100歩ゆずって、ファミリーマートのだとしてもですね、
スパゲティと、歯ブラシと、シェービングクリームであったならば、
やっぱり「ふーん」と思っただけなような気がします。
わかりますか?
この「ふーん」と「ふっ」の差は大きいです。
あなたがおにぎりを食べながら洗濯機に洗剤を放り込んでるところや、
ウナコーワを塗って「くー。」とか言ってるところを想像するだけで、
はからずも口元がゆるみます。
それはなんだか、ほわんほわんしたしあわせな気分です。
たぶん、もう二度と会わないでしょうけれど、
いつかどこかのコンビニですれ違うこともあるかもしれませんね。
それまでどうぞお元気で。 かしこ。
しわくちゃの空とぼくとを記憶する なかはられいこ