あいさつはしたし雨だし、だいじょうぶ

短歌:村上きわみ
文:なかはられいこ


林檎さりさり(ひみつのじゅもんくりかえすクロコダイルだ)林檎さりさり  
村上きわみ



むかし「りんごを囓ると血が出ませんか?」っていうCMがあった。
いまは「ご家族の歯を守るのは、おかあさん、あなたです」ってやってる。
(脅迫じゃん、それ)と、おかあさんであるわたしは思う。
誰かが誰かを守れることなんか、ほんとうにあるんだろうか?
たとえそれが歯であったとしても。世界はそんなにやわくないぞ。
ヒーローだって眠らなきゃなんないし、ご飯も食べなきゃなんないし、
トイレにも行かなきゃなんない。
電車は遅れるかもしれないし、道路は渋滞しているかもしれない。
助けてほしくってあわてて笛を吹いても、間に合わないことばっかりだ。
そんなときは、たったひとりで世界に立ち向かわなきゃいけないんだ。
なんだか泣きたくなってくる。
でも、だいじょうぶ。
ひみつのじゅもんさえ唱えれば、へいき。強いんだからね。
ただし、ひみつがひみつである間は、だ。
はい、ここ、だいじですよ。
アンダーライン引いときましょうね。

あいさつはしたし雨だし、だいじょうぶ  なかはられいこ
by nakahara-r | 2002-10-05 10:50 | きりんの脱臼(短編)


<< しわくちゃの空とぼくとを記憶する あねもね地域連絡網(抜粋) >>